かがやきインタビュー(テキスト)

◆こんにちは。
◆今からかがやきインタビューを始めたいと思います。
◆私はかがやき手話ニュース担当のわたなべたかこです。
◆手話ではこう表します。
◆よろしくお願いします。
◆今日は、手話通訳として30年近く務められている東邦子さんに色々お話していただきたいと思います。
◆よろしくお願いします。

◆最初に、自己紹介と仕事内容についてお話いただきたいと思います。
◆お願いします。
☆はい、私の名前は東邦子と申します。
☆手話通訳と手話の指導を行っています。
☆最近は企業などから、社員研修のための手話の指導をして欲しいと依頼があり、企業へ行って手話を教えております。
◆長い間、手話通訳の仕事をしておられているのですね。
◆すごいですね。
☆いいえ。

◆色々とお忙しいことと思いますが、仕事をしている時に考えていらっしゃること、目的意識はありますか。
☆はい、今の社会では聞こえない方がいることを知らない人が沢山いるでしょう。
☆だから、聞こえない人がいるのが当たり前だという社会、あなたの隣に聞こえない人がいる、どこにでもいる、そんな当たり前の社会になればいいなと、いつも思っています。
◆そうですね。
◆私もそうなんですが、ほとんど黙っていると相手が、私がろう者であることが分からないんですよね。
☆そうでしょう。
◆ろう者だと分からないまま、声をかけてくる時があって、あ、ちょっと…っていう素振りをすると相手もびっくりしてしまって逃げるように去ってしまうことがあって、がっかりしてしまいます。
◆ですので、東さんが言うように、周りにもっとろう者の存在を知って欲しいと思いますね。
☆そうでしょうね。
☆たとえば、自転車のベルの音が聞こえないことがあるので危ないですよね。
☆聞こえない人が道を歩いていても、その人が聞こえないということは分からないんですよね。
☆だから、もしベルを鳴らしても避けない場合は、聞こえないんだなって思って欲しいですね。
◆そうですね。

◆熱心な東さんですが、手話通訳になったきっかけは何ですか。
☆そうですね、皆さんにも言われるのですが私の妹が聞こえないですので、それで手話通訳を目指したの?と言われるのですが、それも理由のひとつなのですが、妹のろう学校の友達が小さい頃に家に遊びに来たことがあって、自然に手話を覚えていったのです。
☆昭和54年、私が市役所で勤めていた時に聞こえない人が受付にいらっしゃって、手話で話してきたのです。
☆でも手話が分からなくて困ってしまいました。
☆その時に、やっぱり手話を本格的に学んで身につけよう!と思ったのが手話を始めたきっかけです。
◆そうなんですか。
◆やはり家の中にいるとそこまで考える事はないかもしれませんね。
◆実は、私にも妹がいるのですが、手話があまり出来ないんですよ。
◆手話を覚えるということについて実感があまり無いようなのです。
◆でも東さんのように手話を仕事に結びつけ、色々な人のために役立つというきっかけがあるのは、とても素晴らしいことだと思いました。
◆その時からずっと手話に関わっていたのですか。
☆そうですね、昭和54年に自分の住んでいた地域で勉強を始めて、それから東京都の講習会に通って勉強をしたりして…。
☆ちょっと、私事なんですが、話してもよろしいでしょうか。
◆ええ、どうぞ。
☆実は、平成元年に私の夫が亡くなりました。
☆平成元年の6月に亡くなって、同じ年の9月に当時の厚生省の手話通訳士の試験が導入されました。
☆夫が亡くなって忙しい状態だったので試験を受けられないと思ったのですが、東京都の通訳の仲間たちが皆で一緒にがんばろうよと言って、一緒に試験を受けたのです。
☆それが平成元年の9月でした。
☆手話通訳士に合格したのが平成元年ですから、20年経つのですが、私が手話の勉強を始めた時、がんばってと励ましてくれた夫が亡くなったので、私が通訳士の試験に受かったことを知らないのですね。
◆そうですか。
☆でも、手話通訳士の試験に受かって夫が居ない中、ひとりで暗くなっているのではなく、聞こえない人たちや友人たちと一緒にがんばってきました。
☆だから、手話の勉強を続けてこられてよかったと思っています。
◆旦那さまが亡くなられてしまったけれど、手話という目標があり、仲間たちがいたからこそ、がんばってこられたのですね。
◆良かったですね。
◆東さんも努力してこられたのでしょうね。

◆それでは、次にいきましょう。
◆手話を始めてから大変だったことですが、それはやはり先ほどお話されていたことでしょうか。
☆そうですね、大変だったことは他にも沢山あるのですが、手話を始めたばかりで手話が下手だった時、聞こえない人に正しく伝わったかどうかが分からないことがありました。
☆聞こえない人が分からないような顔をしているのを見て、不安になってしまったことがあります。
☆本当に通じたかどうか分からなくて、心配だったこともあります。
☆でも、分かった、ありがとうと言ってくれた時はとても嬉しかったですね。
◆最初は通じないことがあるかもしれませんが、少しずつ経験を積み重ねてきたからこそ高い技術を身につけられたのですね。
◆それでは、次です。
◆嬉しかったことはありますか。
☆実は私は10年位、東京都聴覚障害者連盟の専任職員をしていて、毎日、東京都内の色々な地域へ行って耳の聞こえない人と毎日会うことが出来ました。
☆色々な地域にいって、色々なろう者に会うことが私の楽しみでした。
☆聞こえない人との交流を広げることはとても良いことで、とてもありがたいことだと思っています。
◆地域によって手話は少し違うんですよね?
☆いや、東京都はほとんど同じなんですが、高齢者…都連盟の会員の中に珍しい手話を使う人がいて、見たことがない、本にも載っていないような手話を見せてくれて、なるほどと覚えられたことも嬉しいことのひとつです。
◆そうですか。
◆若い人だけじゃなく、高齢者とも交流できることも楽しみのひとつなんですね。
◆今まで活動してきて、印象に残ったことはありますか。
☆はい、あります。
☆10年位前なんですが、知っているかな、「藤原てい」さんという方がいるのですが、お名前は聞いたことがありますか。
◆う〜ん。
☆本を書いた人なんですが、その本のタイトルが「流れる星は生きている」というタイトルです。
☆新田次郎さんの奥さまなんです。
☆昭和20年に戦争が終わって、子供3人、上から5才、3才、赤ちゃんをおんぶして中国から日本に帰ってきた、大変な時期の2年間ぐらいを本にしたものです。
☆それが「流れる星は生きている」という本なのです。
☆自分の体験を本にした藤原さんが講演を行ったのです。
☆その時に通訳を頼まれたので、二人で通訳をするはずだったのですが、その一人が来なかったのです。
☆講演が一時間半、90分なのですが、私一人で通訳したのです。
☆でも、その話の内容が感動的ですごく涙が出るようなお話でした。
☆3人の子供を連れて日本に帰ってきたときの苦労した話で、涙がポロポロ出てくる状態だったけれど、通訳者が泣いてはまずいですので、我慢しながら通訳したのです。
☆講演を見ていた聞こえない人たちが手話を見て涙を流しているのを見て、私ももらい泣きしてしまいました。
☆通訳者が泣いてはまずいので我慢しながら通訳したのですが、本当に感動的で、一生懸命手話で通訳をしていたのを聞こえない人たちが見てくださって、講演して下さった藤原ていさんの気持ちが伝わったんだと、苦労したという気持ちが伝わったんだという感動を今でも覚えています。
◆そうだったんですか。
◆すごい内容ですね。
◆本を書いたという藤原ていさんというのは立派な方なんですね?
☆もし、あなたも時間があれば読んでみて下さい。
◆はい、読んでみます。
◆読みたくなりました。
◆藤原さんの講演はとても良さそうですね。
◆感動できるし、皆さんにも伝わったというのはすごいことだと思います。
◆皆さんが感動したということは、手話が伝わったということになりますね。
◆なるほどですね。

◆それでは、次にいきます。
◆手話通訳を通して学んだことはありますか。
☆聞こえない人たちから学んだことは、本当に沢山あります。
◆そうなんですか。
☆さっきも言ったように、夫が亡くなった後、自分が閉じこもらないように聞こえない人たちが一緒にがんばろうと言ってくれて、色々と助けてくれました。
☆通訳の仲間たちからも一緒にがんばろうと言ってくれて、聞こえない人たちや通訳の仲間たちから色々なことを教わりました。
☆それで、世の中は一人では生きていけない、友達が沢山いるんだ、聞こえない人が沢山いるんだ、と思うようになりました。
☆さきほども言いましたが、私の妹も聞こえないのですが私が手話通訳をがんばっていることで妹に喜んでもらえるので、本当に手話通訳を続けてきてよかった、聞こえない人たちには感謝したいと思っています。
◆なるほどですね。
◆実は妹さんというのが、かがやき手話ニュースの熟年コーナーの原さんが妹さんなんですよね。
◆お姉さまなんですよ。
◆そうですね、一人でも手話が出来る人がいると安心できるし、気持ちも楽になります。
◆東さんが手話を覚えて通訳になってくれたことはありがたいと思います。
☆ありがとうございます。

◆では、将来の夢や目標はありますか。
☆自分の夢というか、もっと若い人たちに手話を覚えて手話通訳を目指して欲しいというのがひとつ。
☆そしてもうひとつは、社会の皆さんが簡単な手話を覚える、たとえば朝会社へ行ったら「おはよう」と手話で表す、それから帰る時は「お疲れさま」「またね」「お元気で」と手話で表すなど、当たり前な、簡単な手話でもいいので皆さんがふつうに手話を使っておしゃべりできる世の中、聞こえない聞こえる関係なく、皆さんが手話を使える社会になればいいなと思います。
◆そうなんですか。
◆手話はろう者のコミュニケーションから始まったものですが、聴者でも使える社会になれば、ろう者ももっと楽しく交流できるでしょうね。
☆そうですね。
☆この間の新聞に、ある企業で新入社員や社員の人が全員集まって「ありがとうございます」を手話でやる練習をしたと載っていました。
☆皆さんがそうやって簡単な手話を覚えて、聞こえる人同士でもいいので「ありがとうございます」という手話を使えばいいですね。
☆そういうふうに当たり前な社会になればいいなと思っているのです。
◆そうなんですか、いい目標ですね。

◆それでは、次にいきます。
◆何かPRしたいことはありますか。
☆そうですね、やっぱり今は色々な勉強方法があります。
☆たとえば、テレビもありますし、インターネットもあります。
☆皆さんが手話を覚えて欲しい、私たちというか、私は高齢ですのでもっと若い人たちで、手話を学ぶ人を育てて増やしていきたいと思っています。
☆色々な方法で手話の勉強ができると思いますので、学校に通わなくても自分で努力して…本で勉強する方法もあるし、ビデオもあると思います。
☆DVDもありますので、皆さんが手話に親しんで手話を身につけて欲しい、手話ができる人がどんどん増えていって欲しいというのが私の願い、希望です。
◆さきほど、自分は高齢だとおっしゃっていましたが、まだまだこれからだと思います。
◆目標、夢が大きいですし、それが伝わってきます。
◆今日は色々お話して下さってありがとうございました。
◆私も本のこととか、色々と勉強になることがありました。
◆そして、かがやきパソコンスクールの新しい手話があるのですが、それを一緒にやって欲しいのです。
◆いいですか?
☆はい。
◆こういうふうに表します。
◆ハートの形になっているのです。
☆分かりました。
◆では、始めます。
◆1、2、3
◆☆ありがとうございました。